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グッド・プラクティス・スキーム

2021年9月18日
第4期運営委員会(第2回)承認

 

GEAHSS ジェンダー平等推進のためのグッド・プラクティス構想

本構想について

 GEAHSS(人文社会科学系学協会男女共同参画推進連絡会 Gender Equality Association for Humanities and Social Sciences)は、これまで実施した各種調査、シンポジウム、アウトリーチ活動等々の諸成果を踏まえ、学会活動においてジェンダー平等を推進するために参照すべきグッド・プラクティス構想を提案する。

 本構想の基本理念は、男女平等・性の多様性に配慮しつつ、男女共同参画社会基本法(Basic Act for Gender Equal Society)(1999年6月制定・施行)が掲げる以下の「基本理念5本の柱」(※)に立脚する。

 

 

 

I.個人の人権の尊重

教育・研究に携わるあらゆる人の個人としての尊厳を重んじ、だれもが一人の人間として能力を発揮できる機会を確保する必要がある。

 

II. 社会における制度や慣行の見直し

固定的な役割分担意識にとらわれずに、だれもが様々な教育・研究活動ができるように、制度や慣行を見直す必要がある。また、教育・研究活動に悪影響を及ぼす無意識のバイアスを意識的に低減・解消していく制度を整える必要がある。

 

III. 政策の立案および決定への共同参画

教育・研究に携わるあらゆる人が社会の対等な構成員として、方針の立案および決定に参加できる機会を確保する必要がある。

 

IV. 個人の活動と教育・研究活動の両立

教育・研究に携わるあらゆる人が家族をはじめとする共同体の対等な構成員として、互いに協力し、社会の支援を受け、その責任を果たしながら、研究・教育活動とその他の活動を行えるようにする必要がある。

 

V. 国際的協調

ジェンダー平等社会を実現していくために、国際社会と共に歩むことが大切である。関連する国際機関と協力して取り組む必要がある。

 

 

上記5本柱を踏まえ、GEAHSS加盟学協会は以下の項目に関する諸課題を共有し、ジェンダー平等推進を加速するための各種方策について継続的に議論すると共に、加盟学協会内における様々な取り組みを推進する。

 

 

1. ジェンダーに付随する各種偏見への取り組みに関して

 各種偏見は比較的容易に起こりうるということを念頭に置き、学協会主催の各種活動においては、主催者は以下の点について十分に考慮すべきである。

(1)各種企画が特定の性別に偏るものとならないよう、慎重に検討する。

(2)ジェンダーに付随する偏見を低減・解消するための研修等の企画を積極的に展開する。

(3)ジェンダーに付随する偏見を低減・解消するための研究等を積極的に推進する。

(4)(2)、(3)の結果を含む、ジェンダーに付随する偏見の低減・解消についての情報を、意識して発信していく。

(5)ジェンダーに付随する偏見によるマイナスの事例が生じた際に報告する窓口を設置し、寄せられた情報については、適切な措置を講じ、合理的に問題を解決する。

 

 

2. シンポジウム登壇者のジェンダーバランスをはじめとする学会企画のありかたに関して

 学術的企画においては、登壇者が特定の性別に偏っていることにより、当該学問への適性に関する固定観念を助長し、性別による社会的格差を拡大する恐れがある。したがって、学協会主催の学術的企画においては、主催者は以下の点について十分に考慮すべきである。

(1)性別により出席のしやすさに差が出ることのないよう、日時、会場、開催の形態を検討する。

(2)登壇者が特定の性別に偏らないようにする。

(3)育児中の会員も参加できるよう配慮する。参加者に対する託児利用料の補助や、近隣で託児サービスが利用可能な会場での開催などを検討する。

(4)その他、会議出席が難しい正当な理由がある会員に対して、出席のための援助を検討する。

(5)プログラム上や資料上の記載においてはすべての性が同等に扱われるようにする。

(6)学協会は定期的に、学協会主催の企画および会員が主催する研究会等における男女比を確認し、不均衡が生じている場合には措置を講じる。

 

 

3. ハラスメント事案への対応に関して

2020年6月1日より、ハラスメントに関する改正法が施行されている。これを受け、各学協会においても、パワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントなどの各種ハラスメントの防止に向け、以下のような取り組みが求められる。

(1)ハラスメント防止委員会を設置する。

(2)ハラスメント防止のための宣言やガイドライン、関連諸規程を作成する。

(3)ハラスメント行為に対する方針について明確にする。

(4)ハラスメント事案に関する相談窓口、調査委員会の設置等、ハラスメント対応のための体制を整備する。その際、守秘義務の遵守や異議申し立ての機会の確保等、当事者双方および関係者の人権に配慮する。

(5)ハラスメント防止のための啓発活動を行う。

 

 

4. 学会誌査読体制に関して

学術雑誌の編集に際しては、編集者は、編集者の役割の重要性とアンコンシャス・バイアスの存在を認識し、性別によって不利益が生じることのないよう、以下の点を十分に考慮すべきである。

(1)十分な理由がない限り、査読に際しては著者を特定できないようにする。

(2)編集委員や査読者は男女の割合が合理的な割合になるように選出する。

(3)著者や分野が偏っていないか注意する。特集のテーマ等において少数者の研究対象を優先するなど、可能な限り多様性を確保する。

 

 

5. 育児や介護への各種配慮に関して

学協会主催の各種活動において、育児や介護については、その負担が特定の性別に偏ることのないよう、またはそれによって不利を被らないよう、主催者は以下の点について十分に考慮すべきである。

(1)性別を問わず、育児、介護期間中の会員に対して費用のかからない休会制度を設置する。

(2)学会等、各種学術的企画の際は、参加者に対する託児利用料の補助や、近隣で託児サービスが利用可能な会場での開催などを検討する。また、育児、介護等により学会等の各種学術的企画に参加できない場合に鑑み、対面とオンライン等の開催をあわせて行うなど形式に配慮し、企画参加、業績付与等の平等性について検討する。(上記2(1)および2(3)を参照のこと。)

(3)介護、育児等を行っている者で休会中でない者に対しては、研究助成金の付与、研究補助者の紹介サービス、モデルケースの紹介による啓蒙等、研究奨励につながる制度を整える。

(4)(2)、(3)の結果によるグッド・プラクティスは積極的に発信し、啓蒙活動を推進する。

(5)その他、正当な理由がある者について、申し出があった場合には必要な措置を講ずる。

 

 

6.学協会執行部のジェンダーバランスに関して

 多くの学協会では、会員の男女比率と比較すると執行部の男性比率が高い状況にある。執行部の男女比率の偏りは、シンポジウム登壇者や委員会における男女比率の偏りやセクシュアル・ハラスメント対応への遅れの原因となっている。執行部のジェンダーバランスに配慮することによって、若手や女性研究者の意見を取り入れた学会運営を行うことができるよう、執行部のジェンダーバランスへの配慮が求められる。

(1)役員選挙の際に、ジェンダーバランスへの配慮を呼びかける。

(2)役員の選考に推薦枠がある場合には、ジェンダーバランスを配慮する。

(3)学協会の役員選挙規則にジェンダーバランスへの配慮を明記する。

(4)学協会の役員選挙規則にジェンダーバランス枠の設定人数を明記する。少数派が少数派でなくなる分岐点であるクリティカル・マス(Critical Mass)は通常30%とされており、集団では30%を超えると政治的影響力を持つことができる。このため、ジェンダーバランス枠の設定は3割以上が望ましい。

 

 

7. ジェンダー平等推進と連動する若手研究者育成に関して

大学院生や若手研究者育成の推進にあたっては、ジェンダーやポジションを理由に若手研究者が不当に仕事を押し付けられたり、キャリアアップを阻害されたり、逆にポストなどを打診されることで、不利益やジェンダーによる格差が生じないよう考慮することが肝要である。以下の点について十分に考慮しながら、研究の発展とキャリア形成の両面で多様な取り組みを推進することが望まれる。

(1)所属・ポジション・氏名を伏せての査読を徹底する等、年齢、性別を問わず、適切に論文等を評価する仕組みを構築する。(上記4を参照のこと。)

(2)研究の発展やキャリア形成を阻害するハラスメントの防止を推進する。

(3)学会等、各種学術的企画(懇親会等も含む)の際には、役割分担が特定の年齢、性別、キャリアに偏らないよう留意する。

(4)(2)、(3)に付随する諸問題の検討過程・結果の共有等、積極的な啓蒙活動の展開を実施する。

(5)大学院生・若手研究者育成のため、予算の付与等の支援対策を積極的に講じる。

(6)その他、正当な理由がある者について、申し出があった場合には必要な措置を講ずる。

 

 

8. バックラッシュが発生した場合の各種対応に関して

グッド・プラクティス構想を実践するに際して、様々な相克が必然的に派生することが従来指摘されている。この種の反発(バックラッシュ)、特にステレオタイプを逸脱する場合に発生するバックラッシュ(例えば同じレベルでは女性の能力は低く評価されること、さらにリーダーシップに関連する主体性を発揮する場合、男性よりも女性に対する反発が顕著であること等)を事前に視野に入れた各種対応が求められる。

 

(1)「バックラッシュ」を巡る諸事例および問題解決に関する諸方策について、啓発的パンフレット等を作成し会員に周知する。

(2)相談窓口の設置など、諸問題を共有し解決に向けた取り組みを模索できる体制を整える。

 

 

9. 国内外における各種連携体制の拡充に関して

 

国際的基準を踏まえたジェンダー平等推進を図る必要がある。

 

(1)それぞれの学会において積極的に国内外での各種連携体制を拡充する。

(2)連携可能な各種学術団体に関してGEAHSSを通して情報を交換する。

 

 

 

GEAHSS加盟学協会は、上記項目の全てあるいはいずれかに関して、問題解決に向けた各種活動を学協会として実践し、また人文社会科学領域に固有の諸課題をGEAHSSという場を通して共有・検討しながら、政策に関する要望や提言の発出に向けて協働する。

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