日本スポーツとジェンダー学会が,森喜朗氏の発言に対して緊急声明を発表

GEAHSS加盟学協会である日本スポーツとジェンダー学会が,「森喜朗・公益財団法⼈東京オリンピック・パラリンピック競技⼤会組織委員会会⻑の発⾔に関する緊急声明」を発表しました。詳細は,以下のURLよりご覧ください。

https://jssgs.org/archives/3363


森喜朗・公益財団法⼈東京オリンピック・パラリンピック競技⼤会組織委員会会⻑の発⾔に関する緊急声明

2021年2月4日 日本スポーツとジェンダー学会執行部

 2021年2月3日に開かれた公益財団法人日本オリンピック委員会の臨時評議員会において、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、東京2020組織委員会)会長を務める森喜朗氏が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」「(女性は)競争意識が強い」といった趣旨の発言をし、さらに「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困る」という意見を否定することもなく紹介したことが報道されています(読売、朝日、日本経済、毎日各紙、NHK、2021年2月3~4日)。

 この発言について森氏は、2月4日午後に開かれた記者会見において「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であった」と認め、発言について謝罪、撤回しました。

 日本スポーツとジェンダー学会では、創立から20年の間、こうしたスポーツ界における性差別的な認識と組織のあり方を批判的に検証し、改革に必要な情報の提供を行ってきました。しかし、森氏の発言と発言時にその場に居合わせたスポーツ関係者の反応は、性にもとづく差別が日本の体育・スポーツ界をリードすべき立場にある組織に蔓延していることの現れであると判断されてもやむを得ないものでした。

 日本スポーツとジェンダー学会執行部は、森氏のこの発言が客観的な証拠に基づかず、女性の特性を恣意的に作り上げ貶めるものであること、また、スポーツ界のみならず、日本社会全体の女性進出が非常に遅延しているという問題の重大さを認識しておらず、女性の社会進出を否定するものであると受け止めました。

 森氏は東京2020の組織委員会会長という立場であるだけでなく、現公益財団法人日本スポーツ協会最高顧問、元首相でもあり、日本のスポーツ界、ひいては日本社会全体に長期に渡り、大きな影響力を持つ立場にあります。

 オリンピック・パラリンピックは、巨額の税金が投入される公共性の高いスポーツイベントです。その組織委員長として、日本スポーツ協会の最高顧問として、今後このような性差別的認識や男女不平等を具体的にどのように改善していくのか、明確な方針と具体策の提示を求めます。

 お詫びと撤回という、発言がなされた場だけを捉えた反応や対応ではなく、日本のスポーツ界が真にこの問題と向き合い、より良い方向に向かうための言葉こそが、スポーツに関わる組織のリーダーに求められています。

 参考までに、森氏の発言が東京2020に関わる以下の理念や方針、条項のいずれにも反するものであることを示しておきます。(本件に関連する部分のみ抜粋)。

①オリンピック憲章 「オリンピズムの根本原則 6」  このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。 「IOCの使命と役割 8」  男女平等の原則を実践するため、あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を促進し支援する。

②オリンピック・アジェンダ2020 20+20提言 「提言11 男女平等を推進する」 1.IOCは国際競技連盟と協力し、オリンピック競技大会への女性の参加率50%を実現し、オリンピック競技大会への参加機会を拡大することにより、スポーツへの女性の参加と関与を奨励する。 2.IOCは男女混合の団体種目の採用を奨励する。 「提言38 狙いを絞った候補者探しを実行する」 IOC委員の就任について、従来の申し込みによる方法から、狙いを絞った候補者探しのプロセスに移行する。 2.一連の基準を満たした候補者のプロフィールは指名委員会を通じ、IOC理事会に提出され承認を受ける。とりわけ以下の基準を満たすべきである。 ・男女のバランス

③国際オリンピック委員会(IOC)ジェンダー平等再検討プロジェクト(2018年)“IOCジェンダー平等報告書” 「13 大会組織委員会」 ・オリンピック憲章を尊重し、オリンピック・ブランドを保護するための公約の一環として、大会組織委員会は大会のあらゆる面で女性と男性の公正で平等な表象を提供する。 「ジェンダー平等達成に向けた6つの要因」 3.排除のない組織文化を維持(場合によっては導入)する ※なお、この報告書はタイトルが示すように全体にわたってオリンピック・ムーブメントにおけるジェンダー平等の現状について分析、考察している。

④国連 持続可能な開発目標(SDGs) 「5 ジェンダー平等を実現しよう」 5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。 5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。

⑤東京都人権施策推進指針(2015年8月) 「Ⅱ 基本理念と施策展開の考え方 1 人権施策の基本理念」 1.人間としての存在や尊厳が尊重され、思いやりに満ちた東京 2.あらゆる差別を許さないという人権意識が広く社会に浸透した東京 3.多様性を尊重し、そこから生じる様々な違いに寛容な東京

以上


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